コラム

認知症の親の不動産売却|意思能力の判断基準と成年後見制度を使った売り方

不動産

認知症の親の不動産売却|意思能力の判断基準と成年後見制度を使った売り方

この記事でわかること

  • 売却の可否を分けるのは診断名ではなく意思能力の有無
  • 意思能力がない状態で結んだ売買契約は無効になる(民法3条の2)
  • 成年後見の申立費用は収入印紙800円+登記手数料2,600円ほか
  • 居住用不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要。許可なしの処分は無効
  • 親族が後見人に選ばれたのは16.4%(令和7年・最高裁)

施設の入居費用を用意したい、空き家になった実家の管理が負担になってきた。
そうした理由で親の家を売ろうとしたときに、認知症が壁になることがあります。

不動産を売るには、売主本人が契約の内容を理解して判断できること、つまり意思能力が必要です。
これが失われていると判断されると、売買契約そのものが無効になります。
家族が代わりに売ることも、委任状を用意することもできません。

ただし、売る方法がなくなるわけではありません。
判断能力が残っていれば本人が売却でき、低下しているときは成年後見制度を使って売却する道があります。

この記事では、意思能力がどう判断されるのか、成年後見制度を使った売却の流れと費用、認知症になる前にできる備えまでを整理します。
大阪・天王寺で相続を専門に扱う司法書士が、決済の立会いで実際に何を確認しているかも交えてご紹介します。

結論|判断の分かれ目は「認知症かどうか」ではなく「意思能力の有無」

判断の分かれ目は「認知症かどうか」ではなく「意思能力の有無」

認知症と診断されたことと、不動産を売れないことは、そのままつながりません。
法律が求めているのは診断名ではなく、契約の内容を理解して判断できる力があるかどうかです。
まずは親御様の状態がどこに当てはまるかを確認してください。

親の状態売却の方法主な手続き
契約の内容を理解して判断できる本人が売主として契約する通常の売買。司法書士が本人と面談して意思を確認する
判断能力が不十分成年後見人が本人に代わって契約する家庭裁判所への後見開始の申立て。居住用不動産は売却許可も必要
今は元気だが将来が心配家族信託・任意後見契約・生前贈与・早めの売却本人に判断能力があるうちにしか選べない

認知症の診断を受けていても、軽度であれば本人が売却できる場合があります。
逆に診断を受けていなくても、契約の場で理解が追いついていないと判断されれば取引は進みません。
どの段階にいるかで取るべき手続きが変わるため、まず現状を見極めることが出発点になります。

認知症の親の不動産が売れなくなる理由

認知症の親の不動産が売れなくなる理由

意思能力を欠いた状態の契約は無効になる

意思能力とは、自分の行為によってどのような結果が生じるかを理解し、判断できる力のことです。
民法では、法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効と定められています(民法第3条の2/e-Gov法令検索:民法)。

無効とは、契約が最初からなかったことになるという意味です。
買主は所有権を得られず、受け取った代金は返さなければなりません。
不動産会社や司法書士が売主の様子を慎重に確認するのは、この無効のリスクがあるためです。

家族でも、親の不動産を勝手に売ることはできない

親の不動産は親の財産です。
子や配偶者に当然の処分権限はなく、家族全員が賛成していても、本人の意思が確認できなければ売却はできません。
同居して介護をしている、固定資産税を立て替えている、といった事情があっても結論は変わりません。

委任状があっても売却できないことがある

「委任状をもらえば子が代わりに売れる」という説明を聞くことがあります。
たしかに代理人による売却自体は認められていますが、問題は委任状を作る時点です。

誰かに代理権を与える行為も法律行為なので、ここでも本人の意思能力が必要になります。
つまり判断能力が失われた後に作った委任状は、委任そのものが無効となり、その委任状に基づく売買契約も無効になります。
実印と印鑑証明書がそろっていても同じです。

無断で進めると、後から無効を主張されることがある

売却の時点では問題なく見えても、無効のリスクは残ります。
契約の無効を主張してくるのは、多くの場合、売却に関わっていなかった親族です。

  • 親が亡くなった後、他の相続人が「安く売られた」と無効や損害賠償を求める
  • 買主が所有権を失い、売主側が代金の返還を求められる
  • 相場より安い価格で売った場合に、損害賠償の対象になりやすい

代金をすでに施設費用などに使っていると、返還の資金を用意できず深刻な事態になります。
いま売れたとしても将来の紛争の種が残る、という点が無断売却の怖いところです。

意思能力はどのように判断されるのか

意思能力はどのように判断されるのか

診断名ではなく、取引ごとに個別に判断される

意思能力の有無は、医師の診断書だけで機械的に決まるものではありません。
同じ人でも、簡単な契約なら有効で、不動産の売買では不十分と判断されることがあります。
不動産売買は金額が大きく、権利関係も複雑なため、求められる理解の水準が高くなるからです。

認知症の重症度と法律上の意思能力は、そのまま対応するわけではありません。
軽度だから必ず売れる、中等度だから必ず売れない、と段階で線を引くことはできない点に注意してください。
判断材料としては、医師の診断書のほか、日常生活での金銭管理の状況、契約当日の受け答えなどが総合的に見られます。

不動産の売買で特に重視される4つの着眼点

実務では、次の4点に複数当てはまるほど、後から契約の有効性を争われやすくなります。
家庭裁判所が居住用不動産の売却を許可するかどうかを判断する際の視点とも重なります。

着眼点確認されること
判断能力の程度道に迷う、金銭管理ができない、電話の応対が難しいなどの症状があるか
売却の必要性自宅を売ってまで本人の生活資金を確保する必要があるか
価格の相当性売却価格が相場からかけ離れて安くないか
本人の住まいへの影響売却によって本人が住む場所を失わないか

【要確認】元原稿にあった裁判例3件(東京地裁・大阪高裁ほか)を使った比較表は、事件番号と出典を確認できなかったため、この表に置き換えています。
判決の特定ができる資料をお持ちであれば、裁判例つきの表に戻せます。

決済の場で司法書士が確認していること

不動産の所有権移転登記を申請する司法書士には、登記の申請人が本人であること、そして本人の意思に基づく申請であることを確認する義務があります。
そのため決済の当日には、売主と面談して直接お話を伺います。

  • 今日どのような手続きのために集まっているかを説明できるか
  • 売る不動産がどれで、いくらで売るのかを理解しているか
  • 代金を誰が受け取り、何に使う予定かを答えられるか
  • 売却について家族に任せきりになっていないか

ここで意思が確認できなければ、司法書士は登記を申請できません。
決済の直前になって手続きが止まると、買主にも迷惑がかかります。
不安がある場合は、売却活動を始める前に専門家へ相談しておくほうが結果的に早く進みます。

成年後見制度を使って売却する流れ

成年後見制度を使って売却する流れ

判断能力が不十分な場合は、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、選任された成年後見人が本人に代わって売買契約を結びます。
令和7年に申し立てられた事件のうち、申立ての動機として「不動産の処分」を挙げたものは36.3%にのぼります。
預貯金の管理、身上保護、介護保険契約に次ぐ4番目の理由です(最高裁判所事務総局家庭局:成年後見関係事件の概況(令和7年))。

1. 家庭裁判所に後見開始の申立てをする

申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族などで、申立先は本人の住所地の家庭裁判所です(裁判所:後見開始)。
申立書のほか、本人の戸籍謄本、住民票、診断書と本人情報シートの写し、登記されていないことの証明書、財産や収支に関する資料などを提出します。

診断書は家庭裁判所所定の書式で、かかりつけ医などに作成を依頼します。
書類の収集だけで1か月前後かかることも珍しくありません。

2. 後見人が選任される

家庭裁判所が審理を行い、必要に応じて調査官が本人や申立人に面接します。
審理期間は2か月以内に終わったものが71.1%、4か月以内では93.8%です(令和7年・最高裁)。

ここで注意したいのが、申し立てた家族がそのまま後見人になるとは限らない点です。
令和7年に選任された後見人等のうち、親族が選ばれたのは16.4%で、残り83.6%は親族以外でした。
親族以外の内訳は司法書士33.5%、弁護士24.9%、社会福祉士20.4%となっています。

本人の財産が多い場合、収益不動産がある場合、親族間で意見が分かれている場合などは、専門職が選ばれやすい傾向にあります。
当事務所では、娘様と代表の司法書士がそろって後見人に就任し、不動産を売却した事例があります。
財産管理に慣れた時点で司法書士が辞任し、その後はご本人が後見人を続ける進め方です(親の成年後見人になれました(神戸市・50代))。

3. 不動産会社と媒介契約を結び、査定と販売活動を行う

後見人が選任されたら、不動産会社に査定を依頼し、媒介契約を結んで売却活動に入ります。
居住用不動産の場合は後の許可申立てで査定書が必要になるため、根拠のはっきりした査定書を用意しておきます。

4. 居住用不動産は家庭裁判所の許可を得る

買主が決まったら、売買契約の前に家庭裁判所へ居住用不動産処分許可の申立てを行います。
詳しくは次の章で説明します。

5. 売買契約・決済・所有権移転登記

許可が下りたら売買契約を結び、代金の決済と所有権移転登記を行います。
売却代金は本人の財産として管理され、施設費用や生活費など本人のために使われます。
後見人は家庭裁判所に対して、定期的に財産状況を報告します。

申立ての準備から売却の完了までは、半年から1年程度を見込んでおくと安心です。
買主との契約スケジュールには、許可が下りるまでの期間を織り込んでおく必要があります。

居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要

居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要

「居住用不動産」に当たる範囲

成年後見人が本人に代わって居住用不動産を処分するには、家庭裁判所の許可が要ります(民法第859条の3)。
裁判所は、現に住居として使用しているものに限らないとしています。
現在は病院や施設に入所していて居住していないが、将来居住する可能性がある場合や、入所前に居住していた場合も含むという扱いです(裁判所:成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可)。

施設に入って誰も住んでいない実家でも、許可が必要になると考えておいてください。
一方、投資用に持っている物件など、本人の生活の本拠と関係のない不動産は対象外です。
許可が必要な処分は売却だけでなく、抵当権の設定、賃貸借契約の締結や解除、建物の取り壊しも含まれます。

許可の申立てに必要なもの

項目内容
申立人成年後見人(保佐人・補助人は不動産を処分する代理権が付与されている場合に限る)
申立先後見開始の審判をした家庭裁判所
申立手数料収入印紙800円分(ほかに連絡用の郵便料)
主な添付書類売買契約書の写し、処分する不動産の評価証明書、不動産業者が作成した査定書、登記事項証明書など

裁判所は、売却の必要性、価格の相当性、本人の住まいへの影響などを審査します。
「後見人が選任されれば自由に売れる」わけではなく、本人の利益になる売却かどうかが判断の中心になります。

許可を得ずに売ると、処分そのものが無効になる

裁判所は、家庭裁判所の許可を得ないで処分をした場合、その処分は無効となるとしています。
後見人の責任問題にとどまらず、取引そのものが成り立たなくなります。
買主や不動産会社にも大きな損害が生じるため、手順を飛ばさないことが何より大切です。

成年後見制度を使うときの費用と注意点

成年後見制度を使うときの費用と注意点

申立てにかかる費用

費目金額
申立手数料(収入印紙)800円
登記手数料(収入印紙)2,600円
連絡用の郵便料裁判所によって異なる
鑑定費用(必要な場合)令和7年に鑑定が行われたのは全体の3.4%。費用は10万円以下が85.8%
診断書の作成料医療機関によって異なる

申立て自体の実費は数千円程度で済むことが多く、鑑定が行われるケースはごく一部です。
専門家に申立書類の作成を依頼する場合は、別途その報酬がかかります。

専門職が後見人になると報酬が続く

後見人の報酬は、本人の財産から支払われます。
金額は家庭裁判所が事案ごとに決めますが、公表されている「めやす」では基本報酬が月額2万円とされ、管理する財産額に応じて増額されます。

管理財産額基本報酬の月額のめやす
1,000万円以下2万円
1,000万円超〜5,000万円以下3万円〜4万円
5,000万円超5万円〜6万円

収益不動産の管理が複雑な場合や、親族間の意見の調整が必要な場合などは、基本報酬の50%の範囲内で加算されることがあります(裁判所:成年後見人等の報酬のめやす)。
あくまで目安であり、この範囲に収まるとは限りません。

不動産を売った後も制度は続く

成年後見は不動産を売るための制度ではなく、判断能力が不十分な本人を保護するための制度です。
自宅の売却が終わったからという理由で、家族の意向だけで後見人を辞めてもらうことはできません。
現行の制度では、本人の判断能力が回復しない限り、原則として本人が亡くなるまで続きます。

また、後見が始まると本人の財産管理は後見人の権限に移ります。
家族が預金を自由に引き出すことはできなくなり、家族が望む使い道と後見人の判断が食い違う場面も出てきます。
制度を使う前に、この点を家族で共有しておいてください。

【2026年改正】後見を終了できる仕組みが新設される

この「一度始めると終われない」という点については、法改正が決まっています。
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されています(法務省:成年後見及び遺言の制度の見直しについて)。

  • 後見と保佐の制度を廃止し、補助の制度に一元化する
  • 本人にとって必要な範囲で制度を利用できるようにする

施行日は、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日とされており、2026年10月時点ではまだ決まっていません。
つまりいま申し立てる場合は現行の制度が適用されますが、近い将来に運用が変わることを前提に検討しておくとよいでしょう。
施行の時期や既に利用している人の取扱いは、申立ての前に最新の情報をご確認ください。

認知症になる前にできる4つの備え

認知症になる前にできる4つの備え

ここまで見てきたとおり、判断能力が失われた後にできることは限られます。
次の4つは、いずれも本人に判断能力があるうちにしか選べません。

方法認知症の後に売却できるか主な費用向いているケース
家族信託受託者の判断で売却できる契約書の作成費用・公正証書作成費用・信託登記の費用収益物件や自宅を家族の判断で管理・処分したい
任意後見契約任意後見人が代理するが、居住用不動産は家庭裁判所の許可が必要公正証書作成手数料1契約11,000円ほか後見人を自分で決めておきたい
生前贈与名義が子に移っているため子の判断で売却できる贈与税・登録免許税・不動産取得税早い段階で名義を整理したい
元気なうちに売却売却済みのため問題にならない譲渡所得税・仲介手数料住む予定がなく、資金化を急ぐ

家族信託

家族信託は、財産を持つ本人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理や処分を任せる契約です。
信託した不動産は受託者の名義で登記され、本人が認知症になった後も、受託者の判断で売却できる点が最大の特徴です。
居住用不動産であっても家庭裁判所の許可は必要ありません。

ただし、受託者が何でもできるわけではなく、信託契約で定めた目的と権限の範囲内で動くことになります。
信託する財産の範囲、受託者の権限、信託が終わったときの財産の行き先まで設計が必要で、契約書の作成に専門的な知識が要ります。
身上監護は信託の対象にならないため、介護施設の契約などが必要になる場合は後見制度との併用も検討します。

任意後見契約

任意後見契約は、判断能力があるうちに、将来の後見人と支援してもらう内容を自分で決めておく制度です。
公正証書で作成することが法律で義務づけられています。
効力が生じるのは判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点です(日本公証人連合会:任意後見契約)。

費目金額
公正証書作成手数料1契約につき11,000円(証書が4枚を超えると1枚ごとに250円加算)
法務局に納める収入印紙2,600円
登記嘱託手数料1,400円
正本・謄本の作成手数料証書の枚数×250円

法定後見と違い、自分で後見人を選べることが大きな利点です。
不動産についても、どのような場合に売却してよいか、代金を何に使うかを契約で決めておけます。
当事務所でも、おひとりで暮らす方の任意後見契約をお手伝いした事例があります(おひとりさまの終活・任意後見・死後事務委任契約(八尾市))。

生前贈与

親から子へ名義を移しておけば、その後は子の判断で売却できます。
暦年課税では年110万円の基礎控除があります。
ただし2024年1月1日以後の贈与から、相続財産に加算する期間が順次7年へ延長されています(国税庁:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))。
相続時精算課税では、特別控除2,500万円に加えて年110万円の基礎控除が使えます(国税庁:No.4103 相続時精算課税の選択)。

一方で、不動産の贈与には登録免許税と不動産取得税がかかり、相続で取得する場合より負担が重くなることがあります。
税額は財産の構成や家族関係によって大きく変わるため、実行前に税理士へご確認ください。

元気なうちに売却する

住む予定のない実家であれば、本人の判断で売ってしまうのが最も簡単です。
手続きは通常の売買と変わらず、売却代金を施設費用や生活資金に充てられます。
本人が納得して決められるという点でも、後から争いになりにくい方法です。

「まだ元気なのに財産を処分するのは早い」と感じるかもしれません。
ただ、判断能力がはっきりしているうちに決めたほうが、本人の希望に沿った形で進められます。
物忘れが目立ち始めたら、具体的な検討を始める時期と考えてください。

成年後見での売却に対応できる不動産会社の選び方

成年後見での売却に対応できる不動産会社の選び方

成年後見を使った売却は、通常の売買とは進め方が違います。
家庭裁判所へ提出する査定書の準備や、許可が下りるまで決済を待つ段取りなど、後見案件を扱った経験のある会社かどうかで進み方が変わります。

専門家経由と自分で探した会社、両方から査定を取る

相場からかけ離れた安い価格では、家庭裁判所の許可が下りません。
成年後見に詳しい司法書士や弁護士を通して査定を依頼すると、裁判所に説明できる根拠を備えた査定書が出てきやすくなります。

あわせて、ご自身でも複数の会社に査定を依頼してください。
査定額は会社によって差が出ることがあり、比べることで相場感をつかめます。
査定額は売り出しの目安であって、成約価格ではありません。
高い査定額だけで選ぶと買い手がつかず、結局値下げすることになりがちです。

安易な「買取」の提案には注意する

成年後見を使わずに進められると持ちかけ、相場より安い価格で自社買取を勧めてくる会社もあります。
手間がかからないように見えても、後から契約の無効を主張されれば代金を返すことになります。
手続きを省けるという説明には、必ず根拠を確認してください。

依頼前に確認しておきたいこと

  • 成年後見人からの売却依頼を受けた経験があるか
  • 家庭裁判所に提出する査定書を作成した実績があるか
  • 司法書士や弁護士との連携に慣れているか
  • 許可が下りるまで決済を待つスケジュールに対応できるか
  • 査定額の根拠を具体的に説明できるか

免許番号や行政処分歴は、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで確認できます。

売却した後と、相続に向けて確認しておくこと

売却した後と、相続に向けて確認しておくこと

売却代金は本人の財産として管理する

売却代金は本人のものであり、後見人が本人のために管理します。
家族の生活費や他の親族への贈与に充てることはできません。
専用の口座で管理し、収支の記録を残しておくと、家庭裁判所への報告もスムーズです。

譲渡所得税の申告が必要になることがある

不動産を売って利益が出た場合は、譲渡所得税の申告が必要です。
本人が存命であれば本人の所得として申告します。
取得費が分かる資料(購入時の売買契約書など)が残っているかどうかで税額が変わるため、売却前に探しておいてください。
居住用財産の特例が使えるかどうかは状況によって異なるため、税理士へご確認ください。

相続が起きたときに備えて

不動産を売らずに相続を迎えた場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、相続登記を申請することになります。
2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。
当事務所の相続登記サポートでは、戸籍の収集から登記申請までをお引き受けしています。
登記を放置したときに起こることは、相続登記を放置したひとの末路(後でお金を失う)で解説しています。

もう一つ気をつけたいのが、相続人の中に認知症の方がいる場合です。
遺産分割協議にも意思能力が必要なため、この場合も成年後見制度を使うことになります。
相続手続きの全体像は、相続手続きの代行はどこまで頼める?依頼できる業務・できない業務と費用相場をご覧ください。

まとめ|売れるかどうかは「意思能力」で決まる

認知症の親の不動産を売れるかどうかは、診断名ではなく意思能力の有無で決まります。
判断能力が残っていれば本人が売却でき、不十分な場合は成年後見制度を使って売却することになります。
居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要で、許可を得ない処分は無効です。
制度は売却が終わっても続き、専門職が後見人になれば報酬も続きます。
本人に判断能力があるうちなら、家族信託・任意後見契約・生前贈与・早めの売却という選択肢があります。

親御様の物忘れが気になり始めた段階が、いちばん選択肢の多い時期です。
時間が経つほど取れる手段は減り、成年後見制度しか残らなくなります。

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認知症の親の不動産売却に関するよくあるご質問

認知症と診断されたら、もう家は売れませんか?

診断を受けただけで売れなくなるわけではありません。

契約の内容を理解して判断できる状態であれば、本人が売主として売却できます。

判断できる状態かどうかは、決済の場で司法書士が本人と面談して確認します。

不安な場合は、売却活動を始める前に専門家へ相談してください。

親の委任状があれば、子どもが代わりに売れますか?

委任状を作る時点で親に意思能力がなければ、委任そのものが無効になります。

その委任状に基づく売買契約も無効となるため、実印と印鑑証明書がそろっていても売却はできません。

判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用することになります。

成年後見人が選任されれば、すぐに売却できますか?

すぐには売却できません。

居住用不動産の場合は、売買契約の前に家庭裁判所の許可が必要です。

許可の申立てには売買契約書の写しや査定書などが要るため、買主が決まってからの手続きになります。

申立ての準備から売却完了までは半年から1年程度を見込んでおくと安心です。

施設に入っていて誰も住んでいない実家も、許可が必要ですか?

必要になると考えてください。

裁判所は、現在は施設に入所していて居住していない場合や、入所前に居住していた場合も居住用不動産に含めて扱っています。

許可を得ずに処分すると、その処分は無効になります。

子どもが後見人になることはできますか?

できますが、必ず選ばれるとは限りません。

後見人を決めるのは家庭裁判所で、令和7年に選任されたうち親族が選ばれたのは16.4%でした。

本人の財産が多い場合や、収益不動産がある場合、親族間で意見が分かれている場合は専門職が選ばれやすくなります。

親族と専門職が一緒に後見人となり、落ち着いた時点で専門職が辞任するという進め方もあります。

この記事の監修者

遺産相続手続きに強いミカタ相続司法書士・行政書士事務所の代表

宮本 赳宏 - ミヤモト タケヒロ -

本記事は、ミカタ相続司法・行政書士事務所 代表司法書士 宮本赳宏(大阪司法書士会第4123号)が監修しています。
相続手続き、遺産分割、相続登記などの実務知見をもとに、初めて相続に向き合う方にも分かりやすい情報提供を心がけています。

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